義肢装具士は、どんな業務をしているイメージがありますか?
近年ではパラリンピック等で注目も集まり、義手や義足などを手がける華やかなイメージを持たれている方もいるかもしれません。
今回は、実際に義肢装具士がどんな業務を行っているのか、元義肢装具士がリアルな視点でお伝えします。
本記事の内容は、以下の通りです。
目次
義肢装具士の仕事の流れ
義肢装具士の仕事の流れを簡潔にまとめます。
- 病院へ訪問し、医師から処方の指示を受ける。
- 患者様の型を採る(採型業務)
- 会社に型を持ち帰り、義肢装具を製作する(製作業務)
- 患者様に義肢装具が適合するかを確認し、お渡しする(適合業務)
基本的には、この一連の流れが仕事内容となります。
もう少し細かくみていきましょう。
採型業務について
まず、義肢装具士が最も能力を発揮するのが、この採型業務です。
採型とは何か、説明します。
一言で表すと、
「患者様の身体の形を再現する」ことです。
具体的には、主流なやり方だと石膏包帯を使用します。
焼石膏の粉末を付着させた包帯。水に浸して一定時間が経過すると、非常に硬くなります。
この性質を利用し、患者様の身体に合わせて石膏包帯を巻き、硬化してきたところで切り外します。
そうすることで、硬化した石膏包帯が患者様の身体を再現してくれます。
言ってしまえばこれだけですが、採型技術は非常に重要です。
質の良い型(モデル)は、そのまま出来上がる義肢装具の質に直結します。
形を採るだけ。
と思いがちですが、良い型(モデル)を採るには高いスキルが求められます。
現場では下手な型を採ってくると、製作する方に非常に嫌な顔をされるので注意が必要です。
また自分で作るとしても、型が悪いと製作が難しくなります。
製作業務について
採った型からモデルを起こし、それを元に義肢装具を製作をします。
ここで1つポイントです。
製作業務には、義肢装具士の資格は必要ありません。
義肢装具士の資格が必要なのは、患者様に接する場面です。
実際、製作においては無資格の方も多くいます。
製作だけを目標にする場合は、資格取得を目指す必要はないので製作者を求めている企業を探しましょう!
適合業務について
適合業務では、製作した義肢装具を患者様の身体に合わせ、機能やバランス、接触面に問題がないかを確認する作業です。
適合業務では、義肢装具士の「目」がとても重要です。
適合時に問題に気付けずに納品してしまった場合、
さまざまな問題が発生します。
例を挙げると
- 義肢や装具との接触面が悪く、皮膚に傷ができる。
- バランスが悪いと、歩容(歩行パターン)が悪くなる。
- 装具が適切な効果を発揮せず、問題が解消しない。
- 身体バランスを悪化させ、腰や肩など別の部位を痛めてしまう。
このような問題は、適合業務をしっかり行うことで防ぐことができます。
「分業制」「一貫制」による仕事内容の違い
義肢装具製作会社では、「分業制」と「一貫制」。
どちらかの体制をとっています。
どちらの体制をとっているかによって義肢装具士の仕事内容が変わってくるので、ご紹介します。
分業制とは?
はじめに紹介した義肢装具士の仕事を流れを、分担して行うのが分業制です。
中規模~大規模の企業はこの方式をとっている場合が多いです。
では、具体的なメリット・デメリットを見ていきましょう。
- 義肢装具の製作スピードが速い
- 担当分野が決まっているので、成長が早い
- それぞれの担当者がスペシャリストなので、製品の質が高い
- 担当分野の経験しか積めない
- 綿密な連携が取れていないと、当初の設計とズレが生じる
- 適合・納品業務を行った人しか、装具の適合状況を知ることができない
一貫制とは?
では、次に一貫制について説明します。
分業制に対して、一貫制は義肢装具士の仕事の流れを、基本的に1人で行うものです。
担当した人が、採型・製作・適合、全ての業務を行います。
小規模の企業がこの方式をとっている場合が多いです。
こちらのメリット・デメリットは
- 全て1人が行うので、伝達が必要なく、設計図通りのモノが完成する
- 同じ人が担当する分、患者様から信頼を得やすい
- 適合状況・患者様からの声を自分が聞くことができる
- 製作に時間がかかる
- 苦手分野も自分で行うので、製品の質を保つのが難しい
- スケジュール管理を徹底しなければならない
どっちがいいの?
どちらがいいと一概に言えませんが、
全ての工程を1人で出来るようになりたい方は、一貫制を。
患者様に接する業務のスペシャリストになりたい!
あるいは、製作業務よりも直接患者様と接したい!という方は、分業制をオススメします。
「義肢」「装具」どっちが多いの?
義肢装具士は、海外では「義肢士」「装具士」と、2つに別れていることが多いです。
では、日本では実際にどちらのほうが多く作られているのでしょうか?
あなたは、どちらだと思いますか?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・。
正解は、
圧倒的に「装具」です!!
と、いうのも日本では、義肢が必要な人数に対して、装具が必要な人数が圧倒的に多いのです。
四肢の切断の理由は交通事故や糖尿病などあるのですが、数は多くありません。
対してコルセットやインソールなど、そういった装具が必要な症状は誰しもがなり得るものです。
だから、義手や義足を作ってみたい!
という方は注意が必要です。
企業によっては、受注数の少なさから、義手や義足を扱わないところもあります。
義手義足に強い企業を選んでいきましょう!
まとめ
義肢装具士は、国家資格化してからまだ歴史が浅いです。
現場では職人気質の方が多く、こつこつと技術を積み上げていく必要があります。
また、医師や他のリハビリ職との連携が大事ですが、義肢装具士として意見を言えるようになるには、
関係性作りと、信頼に値するだけの専門的な知識が必要です。
どちらかと言えば裏かたで、華やかなイメージを持たれていると、ギャップを感じることもあるかもしれません。
決して楽な仕事とは言えませんが、自分が関わった患者様が再び身体的機能を取り戻し、元気になっていく様子をみると、強いやりがいを感じます。
いつからでも遅くはありません。
この記事が、何かのきっかけになれば幸いです。
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